ピタゴラス(1) ~輪廻転生 

輪廻転生という言葉は一度は耳にしたことのある言葉ではないでしょうか?

そう、生まれ変わりの話です。「私は貝になりたい」とか「今度生まれてくるとしたらやっぱり女で生まれてみたい」という風に映画やフォークソングでもありましたね。ですが、この思想は生まれ変わるというのはまだ魂が成長していないからということで何に生まれ変わるにしてもそれは一つの修行なのです。畜生に生まれ変わったならまだまだ厳しい修行を積まないと解脱できないわけですね。

今日では科学者はこういった形而上学をあざ笑うでしょう。少し悟った気でいる人なら「あの世などあるわけない、人生は一度きりなんだ!今ある生を謳歌せよ。」とかいうのではないでしょうか。

ところで私たちが知っているピタゴラスというひとは数学者ですよね。中学校で教わった三平方の定理を発見した、あの人です。その彼もまた輪廻転生という非合理な世界を信じたのです。もちろん紀元前6世紀に生きた人ですから当時は自然科学と人文科学と区別はありません。とはいってもあれほど数字に強い合理的な彼がなぜそれほどまで精神世界に傾倒したかは不思議ですよね。

英語版
As an example, Pythagoras is said to have introduced the concept of transmigration to the Greek world. According to this doctrine, the soul is originally immortal, that is to say divine in its essence; however, we defile ourselves because of ignorance, and in order to atone for sin the soul is buried in the tomb of the flesh. Our manner of existence on the terrestrial medium that we call life is in fact nothing other than the death of the soul. Unless one regains the original divine nature, one is trapped forever in the cycle of death and rebirth. In order to escape from this cycle the soul must seek knowledge (sophia).

In this sense philo-sophia (or philosophy) is a means of releasing the soul from transmigration. Diogenes Laërtius writes that Pythagoras was the first to use the word philosophy (love of knowledge) and the first to identify himself as a philosopher (lover of knowledge). Pythagoras compared life to the festival games, where the spectator is the most desirable position. To be a spectator rather than a competitor means grasping the truth through contemplation or theoria. Plato inherited Pythagoras’s thought in a variety of ways. The doctrine of transmigration, for example, is introduced in Phaedrus. And in Phaedo, the thought of the Pythagoreans on immortality of the soul leads to the theory of ideas. And in Meno we find that the theory of recollection (anamnesis) relies on Pythagoras’s theory of transmigration.

日本語版
たとえば、ピタゴラスは輪廻転生という観念をもたらしたといわれている。それによれば魂は元来、不死すなわち神的な存在であるが、無知ゆえにみずからを汚し、その罪を償うために肉体という墓に埋葬されている。われわれが生と呼んでいる地上の生活は、実は魂の死に他ならない。再び神的本性を回復しないなら、永久に輪廻転生の輪の中にとどまるほかない。それを脱するためには、魂は知恵(ソフィア)を求めなければならない。

その意味で、哲学とは輪廻転生の輪から解脱するための方法なのである。ディオゲネス・ラエルティオスは、哲学(知恵への愛)という語を最初に用い、自らを哲学者(知恵を愛する者)と呼んだ最初の人がピタゴラスだと書いている。ピタゴラスは人生を競技会にたとえ、そこでは観客が最もよい、と述べたといわれている。それは「観想」によって真理を把握するということである。プラトンはさまざまな意味でピタゴラスの考えを受けついでいる。たとえば、『パイドロス』で、ピタゴラス派から受け取った輪廻転生の説を紹介している。また、『パイドン』では、魂の不死に関するピタゴラス派の考えから、イデア論を導いている。そして『メノン』では、輪廻による「想起」説を。

英文のポイント

リポート -第三者の意見の言及

a) リポートとは?

リポートを行う方法の一つが S V that S’ V’…..というリポート構造です。ここでのthat節を導く動詞をリポート動詞といいます。大きくは第三者の「言う」「考える」「示す」の意味に分類できます。ですから I think that S’ V’ …はリポート構造ではありません。ところが、He thinks S’ V’…の場合には

私の考えではなく彼の考えという情報がひとつ、そしてthat S’ V’…の部分で彼の考えの内容が何かという情報がひとつ、計二つの情報が同時に伝えられます。法表現であるI think that S’V’とちがいHe thinks that S’V’…ではHe thinksがなければthat S’V’の情報は書き手のものとなってしまうのです。

♦ リポートが多発する文章の効率的な対処法

リポートは単純なS V that S’V’….に加えて S V O that S’V’…や今回のテクストにもあるaccording to A 「~によれば」のようにリポート副詞句として現れる場合もあります。こうしたパラグラフを難なく読むことができるかどうかはリポート部分の迅速かつ的確な処理を行い,that節内部の内容上の主語S’を見逃さずに記憶にとどめ他の説の主語S S’ S”….との比較ができるか否かにかかってきます。

リポートが何度も繰り返されている長いパラグラフに出会うと、リポート構造の部分に気を取られthat節の主語S’に対する意識が薄れがちになります。また、リポートの時制の変化にも気づきにくくなります。リポート構造と、伝達されている内容とを区別し、リポートの部分では主語Sと時制を頭に入れthat節においては内容上の主語S’に意識を向けるという姿勢を維持することが大切なのです。

♦ It is V-ed that S’ V’… のリポートについて

単純現在isに非人称代名詞Itがもたらす客観的なイメージがプラスされていますね。そしてsayしているのは誰かというのは受動態のため隠されています。誰であるかはいう必要がないという態度です。many peopleあるいはpeople in generalの意味を含んでいるわけです。つまりこれは一般論のリポート構造といえます。

今回のテクストの最初のセンテンスにPythagoras is said to have introduced….という形がありますが、これも

It is said Pythagoras introduced….というパターンに変えられます。報告内容の時制は報告時点に対して過去になることに注意してください。

b) 書き手の判断を伝えるリポート構造

リポート動詞は第三者の意見・見解を読み手に伝えるために使われますが、そこにはもう一つの役割があります。それは内容についての書き手の評価も伝達するということです。

リポート動詞が伝達するリポート内容に対する書き手の立場

 書き手の立場         動詞の実例
 リポート内容を肯定 admit/ acknowledge/ confess/ 「~だと認めている」

realize/ understand 「~だと理解している」

point out 「~だと指摘している」

reveal/ show/ indicate/ demonstrate/ prove 「~を明らかにしている」

 リポート内容を否定 claim/ maintain/ assert/ pretend/ insist「~だと主張している」

believe「~だと信じている」 assume「~だと思い込んでいる」

 リポート内容に中立    say/ state 「~だと述べている」

これ以外にもexaggerate「~だと誇張している」やfabricate「~だとでっち上げている」など、リポートに対し書き手が否定的であるということがはっきり示す動詞もあります。

あとにつづく書き手の主張を予測しながら読むためにもリポート動詞の役割は重要なのです。

c)  リポート動詞以外のリポートのありかた

リポートを行うには、リポート動詞の代わりに、リポートのための形容詞や副詞、副詞句、副詞節を使うことがあります。そしてここでも書き手の立場の受け止め方は重要になります。

 

 書き手の立場    表現の実例
 リポート内容を肯定  as S’ says「S’がいっているように」 (sayの代わりにpoint out「指摘している」admit「認めている」write「書いている」put it「述べている」などを用いる)
 リポート内容を否定  alleged/ allegedly「(真偽は分からないが)~だといわれてる」

supposed/ supposedly「(真偽は分からないが)~だとされている」

or so S’ says 「~などとS’はいっているのだが」

 リポート内容に中立  in A’s opinion「Aの意見だが」/ according to A「Aによれば」

reportedly「~だと報じられている」

so S’ says「S’がいっていることだが」

 

He was arrested for alleged possessing narcotics. 彼は麻薬を所持していたとの申し立てにより逮捕された

The difficulty is, as the author himself states,  that the ancient history of India is mostly legendary.

その著者自身が述べているように、問題はインドの古代史はほとんどが伝説にあることにある

The two men had seemed friendly enough tonight, in Alexis’s opinion, and of course the wives seemed friendly.

その二人の男性は、アレックスの意見では、今夜はうまくいっているように見えていたし、もちろん妻たちも仲良く見えたそうだ。

ここの表に挙げたのは代表的なものの一例にすぎません。こうした様々なリポートから書き手の立場(肯定、否定、中立)を読み取る習慣を身につけたいものです。

 ティーブレイク

あの世の世界といったものを近代科学の力で否定するのは容易なことです。しかしこの科学でさえも知覚・感覚に依存している以上は客観性を持ちえません。ピタゴラスの場合、イオニアを離れた後、エジプト、ペルシャ、中央アジア、インドへと転々と移動したそうですがそうした旅から輪廻転生の思想を得たというのが通説です。

しかし、彼は数学者という立場を保持していました、いや本来なら数学と宗教は切り離せるものではありません。だとすれば、このテクストにもあるように「観客」であることに重きを置いたといえましょう。肉体・知覚はこの世界にあろうとも、精神は外部にあろうとすることです。ですから阪神タイガースを応援するように「ヤッター!」や「ばっきゃろー!」と叫んだり罵声を浴びせるのは肉体に閉じ込められた魂の死を意味します。

それにしてもこの著者である柄谷さんは、前の『ベルリン・天使の詩』の時のように冷静に観察しようとする地味な思想家が好きですね。特に血気盛んな人物が派手な革命に失敗した後、何十年後か新たな理論を獲得し無血革命を成功させたこととか。ご自身の体験か生きた時代に影響されたのかは分かりません。

因みに花田清輝という戦中・戦後派の作家も面白いエピソードを書いています。それはコペルニクスについてです。知識人の闘争というのは書斎の片隅でなされます。地動説を唱え焼き殺されたブルーノや拷問にあったガリレイと比べコペルニクスは保守派(カトリック)と進歩派(プロテスタント)との緊張関係の中を静かに生きたあと自説を公表するのに成功したそうです。カントは自分の思想を「コペルニクス的転向」といったそうですが、コペルニクス自身は決して颯爽とはしていませんでした。ヒーローになれなくても自説を世に送ることに執着した人なのでしょう。