すすんでハンディを背負う人の心理

この英文を80~100字で要約してください。要約にあたっては”self-handicapping”を定義しそれについての筆者の見解をまとめてください。〔注:解答欄はself-handicappingから始まってます〕

 Bad luck always seems to strike at the worst possible moment. A man about to interview for his dream job gets stuck in traffic. A law student taking her final exam wakes up with a blinding headache. A runner twists his ankle minutes before a big race. Perfect examples of cruel fate.

Or are they? Psychologists who study unfortunate incidents like these now believe that in many instance, they maybe carefully arranged schemes of the subconscious mind. People often engage in a form of self-defeating behavior known as self-handicapping -or, in simple terms, excuse-making. It’s a simple process: by taking on a heavy handicap, a person makes it more likely that he or she will fail at an endeavor. Though it seems like a crazy thing to do, it is actually a clever trick of the mind, one that sets up  a difficult situation which allows a person to save face when he or she does fail.

A classic self-handicapper was a French chess champion Deschapelles, who lived during the 18th century. Deschapelles was a distinguished player who quickly become champion of his region. But when competition grew tougher, he adopted a new condition for all matches: he would compete only if his opponent would accept a certain advantage, increasing the chances that Deschapelles would lose. If he did lose, he could blame it on the other player’s advantage and no one would know the true limits of his ability; but if he won against such odds, he would be all the more respected for his amazing talents.

Not surprisingly, the people most likely to become habitual excuse-makers are those too eager for success. Such people are so afraid of being labeled a failure at anything that they constantly develop one handicap or another in order to explain away failure. True, self-handicapping can be an effective way of coping with anxiety for success now and then, but, as researchers say it makes you lose in the end. Over the long run, excuse-making fail to live up to their true potential and lose the status they care so much about. And despite their protests to the contrary, they have only themselves to blame.

 


▶ Words and Phrases

▷ get stuck in traffic 「渋滞に巻き込まれる」 ▷ a blinding headache 「ひどい頭痛」 ▷ twist one’s ankle 「足首をくじく、捻挫する」 ▷ a psychologist 「心理学者」 ▷ a scheme 「計画、企画、もくろみ」 ▷ the subconscious mind 「潜在意識」 ▷ self-defeating 「自滅的な、自ら墓穴を掘るような」  ▷ an endeavour 「努力」 ▷ save face 「対面・面目を保つ」 ▷ distinguished 「卓越した」 ▷ an opponent 「(競技などの)相手」 ▷ odds 「見込み・公算」 ▷ habitual 「習慣的な・常習的な」


その要約の解説するときのポイントは何ですか?

私の説明はこうです。

第一パラグラフは導入で「大事な局面にかぎって不運が訪れるよね」といっています。

そして第二パラグラフのPsychologists who ~  believe that…..  をキーセンテンスととらえます

なぜなら、これは報告構造と呼ばれるものですが、報告者Psychologists(心理学者)に who以下の関係代名詞節がかかっています。これは主張内容that節以下に書き手が説得力を持たせるためといえましょう。つまり、心理学の意見に依拠してその主張に同意するわけですね。その主張that節は

多くの例において、それらの不運は潜在意識において周到に企まれたものだ

というわけです。このパラグラフの後を追ってみましてもself-defeating behavior, self-handicappingといった同義語が出てきて反論することはありません。根拠づけの働きですね。第二パラグラフ最後のセンテンスも同じことを言ってますよ。

Though it seems to …   it is actually clever trick of the mind, one that ~

まず、譲歩の副詞節ですね。これは後ろの主節を強調させる役目を負います。one以下はclever trick of the mind のいいかえです。コンマにはそういう機能があるのです。訳しておきますと

そうすることは一見すると狂気の沙汰にみえるが、実は賢明な目論見なんだ。つまり困難な状況を設定することで、失敗したときに面目を保てるのだ。

 

第三パラグラフでは、新たな固有名詞Deschapells が登場しますがここは第二パラグラフの主張の例であり根拠づけにすぎません。要約の際には省くべき内容ですね。

 

最後のパラグラフは、Not surprisingly で始まるのですが、「驚くほどのことではない」という意味でこれまでの論証からは当たり前のことといっています。それは「言い訳を設定する人は過度に成功を希求している人」でキーセンテンスを肉付けしているのですね。

最終パラグラフにおいて新情報が表れるのは、真ん中あたりのand then, but, as researchers say, it makes~になります。このセンテンスも報告構造なのです。as researchers sayで「研究者がいうように」で研究者に依拠して書き手もその意見に同意するのです。その内容が後ろの主節であり、それが最後の分まで続くのです。in the end = over the long runですし、最後のセンテンスのto不定詞 to blameは結果の用途になります。

 

私は、導入⇒主張⇒オチ という流れで要約しました。

私の要約
大事な場面で不運が訪れるのは無意識にそれをもくろんでいるからだ。ハンディを背負うことで失敗しても言い訳ができ、成功すれば不遇を克服したと称えられる。ただし長い目で見れば自身を傷つけているのだ。(96字)

 

富士哲也先生の解説

要約のための文法的視点

名詞の定義文のパターン

定義すべき用語が可算名詞であるとき厳密な定義は次のパターンを取ります。

A(n)  +  単数形の名詞句 + is  +  a(n)  +  単数形の名詞句  +  which….(関係節)

主語Sも補語Cもともに不定冠詞a(n)+可算名詞単数形です。主語Sが定義される用語で補語Cはその用語によって示されるものが属する類を指定する名詞句を置きます。当然ですが不可算名詞であるときはa(n)は不要ですよ。

例文 A solar cell is a device which converts the energy of sunlight into electric energy.

▷ convert A into B 「AをBに転換する」

「solar cell(太陽電池)とは、太陽光エネルギーを電池エネルギーに転換する装置のことである

少し崩れた形になると

A solar cell is something that changes sunlight into electricity.

となり、関係代名詞がwhichからthatに変わり、日常会話で使われる形になります。なお、補語C直後の関係節の代わりに、分詞に始まる句や形容詞に始まる句を用いることもあります。

例文① Pollution is a form of contamination often resulting from human activity.

「公害とは、多くの場合人間活動が原因の、汚染の一形態のことである

② A theater is a building specifically designed for dramatic performances.

「劇場とは特に演劇の上演を目的とした建築物のことである

③ A robot is a multiprogrammable device capable of performing the work of human.

「ロボットとは、人間の仕事を遂行することができる、さまざまなプログラム可能な装置のことである」 

主語Sの変化が語ること① ~時制とともに

多くの英文においては筆者の主張・意見とともに、その裏付けとなるような証拠を提示する、という形の説得術が取られています。証拠を「エビデンス」と呼ぶことにします。この2種類の節またはセンテンスにはいろいろな文法的な違いがあるです

 ⅰ)主語Sとして設定される名詞句の違い

この文章のように、ヒトのある種の行動がテーマとなる文章であれば、

エビデンスを提示する節・センテンスの主語Sは当然ヒトを示す名詞句です。なぜなら、そのセンテンスは行動の描写を行うのだから筆者の主張・意見を伝えるものではないからです。

これに対し、主張・意見を提示するセンテンスでは、主語Sは行動を示す抽象的な意味の名詞句になります。

 

ⅱ)動詞の時制 ~主張かエビデンスかの観点から

一般に、主張・意見は単純現在で表現されます。それ以外の現在進行や現在完了、過去完了などは事実を伝える、あるいは物語るときに採形でエビデンスとして用いられるのです。

 

【主語Sの変化が語ること① ~時制とともに】 演習問題

 

キーセンテンス発見の実際

出題者の指示は「“self-handicapping”を定義」し、それについての筆者の見解をまとめることです(私はそれを度外視してしまいただ文章全体をまとめてしまいましたが)。

では、まずはじめにself-handicappingが主語になる定義文はどこか?それは不定冠詞や関係節などを思い浮かべると発見できますね。

❡2
①Or are they? ②Psychologists who study unfortunate incidents like these now believe that in many instance, they maybe carefully arranged schemes of the subconscious mind. ③People often engage in a form of self-defeating behavior known as self-handicapping -or, in simple terms, excuse-making. ④It’s a simple process: by taking on a heavy handicap, a person makes it more likely that he or she will fail at an endeavor. ⑤Though it seems like a crazy thing to do, it is actually a clever trick of the mind, one that sets up  a difficult situation which allows a person to save face when he or she does fail.

③の末尾に初めてself-handicappingが登場し④⑤のitがそれを受ける形です。そして④⑤の動詞はisであり、補語Cが不定冠詞a + 単数形の名詞句というように上で確認した厳密な定義文というわけです。④には補語Cに追加される関係節はありませんが。:(コロン)以下がその役目を担っています。⑤ではwhichではなくthatが関係詞になっています。いずれも、「ラフな定義文」ですが④⑤の2文で1つの定義文といえるでしょう。

それでは、self-handicappingについての筆者の見解をまとめましょう。要約のための文法的視点のところで述べましたように、キーセンテンスは主語の名詞句がヒトや行動、そして動詞が単純現在以外でストそれはキーセンテンスにはなりえません。パラグラフ3はどの節もセンテンスも主語SはDeschapellsであり、動詞もすべて単純過去です。つまりパラグラフ3はself-handicappingという行動の事例・エビデンスとして裏づけを取っているにすぎません。筆者の主張・意見はself-handicappingそのものを主語Sに置いたセンテンス・節でありその時制は単純現在であるはずです。この特徴を持つセンテンス・節は最後のパラグラフ4で与えられます。

❡4
①Not surprisingly, the people most likely to become habitual excuse-makers are those too eager for success.② Such people are so afraid of being labeled a failure at anything that they constantly develop one handicap or another in order to explain away failure. ③True, self-handicapping can be an effective way of coping with anxiety for success now and then, but, as researchers say it makes you lose in the end. ④Over the long run, excuse-making fail to live up to their true potential and lose the status they care so much about.⑤ And despite their protests to the contrary, they have only themselves to blame.

①②では、主語Sがthe people…およびsuch peopleになっています。動詞は単純現在ですが、ヒトが主語Sにくるとこのテーマはまだself-handicappingそのものとはいえません。

次の③において主語Sがself-handicappingおよびそれを受けるitになります。

True, S V ….., but S V ….. 

この形は譲歩⇒主張の流れなのです。「確かに・・・であるが、・・・」という意味ですね。そして筆者の主張を表す法助動詞can,評価を下す形容詞effectiveも注目しておくべきですね。これらに関しては別のテクストで解説します。

解答作成の実際

要約とは、取捨選択の作業です。そこで満たすべき条件は4つあります。

要約の鉄則

a. 解答のテーマが課題文と一致していないといけない

b. 解答は高密度でかつ、十分に説明的でなければいけない

c. 解答の中に課題文のロジックが保存されていないといけない

d. 設問に指示がある場合その指示に従わないといけない。

特に重要なのは、bの密度です。それが低いと制限字数に盛り込むべき内容を盛り込めなくなるからです。ここは日本語能力も問われるのですが、概念=漢字熟語を多用するなどすることが密度を上げるポイントになるのです。また比ゆなどの説明的でないところは除外すべきです。ところで、わたしはdの設問の指示を見落とすというケアレスミスをおかしました。これは配点の半分以下になる大きな減点でしょうね。

それでは実践に移ります。self-handicapping の定義の鍵は次の3つのセンテンスでしたね。

キーセンテンスと訳
③People often engage in a form of self-defeating behavior known as self-handicapping -or, in simple terms, excuse-making. ④It’s a simple process: by taking on a heavy handicap, a person makes it more likely that he or she will fail at an endeavor. ⑤Though it seems like a crazy thing to do, it is actually a clever trick of the mind, one that sets up  a difficult situation which allows a person to save face when he or she does fail.

③多くの人々がself-handicapping、あるいは簡単にexcuse-makingと呼ばれている一種の自滅的な行動にかかわっている。④self-handicappingは単純なプロセスである。重いハンディカップを背負うことである試みの際に自らが失敗する可能性を高める。⑤正気の沙汰とは思えないが、self-handicappingは実際には、精神の巧妙なトリックである。すなわち困難な状況を設定することで、実際に失敗したときに体面を保つようにすることができるトリックである。

self-handicappingの定義に入れるべき分類語=補語Cの名詞句にふさわしいのは

④のa simple process 「単純な過程」か、

⑤のa clever trick of the mind

のどちらだと思いますか?

やはり、⑤の「精神の巧妙なトリック」ですよね。④の「単純な過程は広すぎて具体性にかけ説明にはなりえません。

④⑤の残りの部分も比較しましょう。④のコロン〔:〕以下のtaking on a heavy handicap 「自らにハンディキャップを課す」ことは同義反復にすぎず密度が低いと判断されます。④で大切なのは新情報としての a person makes it more likely that he or she will fail at an endeavorのみです。

⑤の先頭の副詞節は譲歩にすぎませんから除外対象ですね。そしてone以下の内容は前半のthat sets up a difficult situation「困難な状況を設定する」と後半のwhich allows a person to save face when he or she does fail「実際に失敗したときに体面を保つことができるようになる」に分けられます。「困難な状況を設定する」は「思いハンディキャップを背負う」のいいかえですがより説明的ですからこっちを会頭に含める方が賢明です。which以下の「実際に失敗したときに体面を保つことができるようになる」はself-handicappingの目的・意義に相当しますから外せないです。

ここから、self-handicappingの定義に入れるべき内容は、3点です。

困難な状況を設定する 10字

ある試みにおいて自らが失敗する可能性を高める  22字

実際に失敗したときに体面を保つことができるようになる  26字

この3つを盛り込みたいですが、この枠だけで58字で半分を超えます。

次は、self-handicappingについての筆者の見方をまとめるという作業に移ります。該当箇所は❡4の次の箇所でしたね。

ポイントは、③のTrue, S V …, S V …「たしかに・・・であるが・・・」という譲歩⇒主張の流れです。

キーセンテンスと訳
True, self-handicapping can be an effective way of coping with anxiety for success now and then, but, as researchers say it makes you lose in the end. ④Over the long run, excuse-making fail to live up to their true potential and lose the status they care so much about.⑤ And despite their protests to the contrary, they have only themselves to blame.

③たしかにself-handicappingは時には成功への不安を乗り切る有効な方法となることもあるが、研究者が述べているように、self-handicappingによって最終的には失敗することになる。④長い目で見ればexcuse-makerは自らの本当の潜在能力を使い切ることはできず、自らが気にしてやまない地位を失うことになる。⑤しかも、いくら違うと言い張っても、悪いのは自分自身なのである。

一般に、譲歩にすぎない部分は要約には排除すべきです。しかし太字の部分に注意してください。self-handicappingについて法助動詞can、そしてnow and thenという副詞句が示すように、あくまで部分肯定であるが筆者の見方の一部とみなせるのです。

では、主張にあたるbut以下は、it makes you lose in the end「それは最終的には敗北となる」ですが、端的すぎて説明的ではないですね。英語では、このような端的な表現の後には、言い換えのための具体的センテンスを置くことが多いのです。④の述部fail to live up to their true potential「自らの真の潜在能力を使い切ることができない」が「敗北する」の具体化なのです。つけ加えrになりますが、④の主語Sはexcuse-makerでヒトを示す名詞句で主張には普通はなりえません。しかし④は③の主張の説明的いいかえであるため捨てるべきではありません。

以上から回答に盛り込むべき内容は

成功への不安を乗り切る有効な方法となることもある 24字

自らの真の潜在能力を使い切ることができない 21字

の2点です。計45字。

この部分と先の定義の部分と合わせると58+45字=103字であとはすこし圧縮すればいいのです。

富士先生の要約
(self-handicappingとは)失敗確率を高める困難な状況を自らに課すことにより失敗時に体面を保つことを可能にする精神的な策略のことである。これは成功不安に対する有効な対処法になりうるが、真の潜在能力を発揮できず失敗する原因になる。(100字)