建築への意志

✱この記事はnoteに投稿したものを加筆・修正したものです。

 ザ・西洋というといろいろ思い浮かべることがあるでしょうが今日は合理主義を取り上げます。19世紀のドイツ哲学者ニーチェという人は道徳の起源に「弱者のルサンチマン」を見出し、解脱を否定し「永劫回帰」を唱えた人です。とにかく宗教的なものを徹底的に嫌いました。

そんな彼が、西洋の合理主義に批判の目を向けたのはどんな理由があるのでしょう。

①Nietzsche discovered that the will to architecture, which appears to characterize  the West, is itself irrational, despite the appearance that it derives from an ostensibly rational will.  ②Nietzsche’s assessment of Christianity as a vulgar Platonism is indeed much more suggestive than the more general view that divides the Hellenic and the Hebraic into a clear-cut dichotomy. ③One wonders if another origin is veiled behind the origin of the Western as such.

(私の訳)

①ニーチェが発見したことだが構築への意志というのは西洋を特徴づけるかに見えるがそれ自体が非合理なんだ。表面上は合理的な意志から発生するかに見えたとしても。②ニーチェが取った方法はキリスト教を卑俗なプラトン主義とみることだが、それは確かに、ギリシア人とヘブライ人をわかりやすい二分法の分ける一般的な見解よりもはるかに示唆的だ。③そうした西洋の起源の背後に別の起源が隠蔽されているのかといぶかしく思える。

読解のポイント

a) 報告構造について

本格的な構文詳解ですと①の文は「報告構造」というそうです。

論文を読む際は

ⅰ)誰の意見

ⅱ)動詞に筆者の評価が含まれている(discoverは賛同)

ⅲ)that節が主張内容  

ここは、長文を読む上でおさえないといけません。

b) 「無生物主語」の訳出はセンスが問われる

②はいわゆる「無生物主語」と呼ばれるものです。

典型的なパターンはあるのですが今日は紙面の都合上省略させてください。

まず、いわゆる無生物主語について、私は訳の上で主語である名詞構文を1つの文にしたうえで、イメージとしては接続詞andを加え無生物主語を代名詞thatに置き換える形をとりました。大学入学という目的を離れて訳出を行うのは楽しいです。ぜひ想像的な工夫を凝らしてみてください。

 c) 比較級構文について

比較級構文において的確に内容を把握するには、

ⅰ)比較対象 ニーテェの方法と一般的な見解

ⅱ)比較基準 suggestive(示唆的)

ⅲ)優劣の度合  much more の語から、はるかにニーチェに軍配あり 

この3点はツボです。

マイ意見

ニーチェはこれまで絶対視されていたキリストの神を科学によって相対化されたといいます。それにつづいて、国家や人類の進歩までもが貶められてニヒリズムをもたらすわけです。

このテキストは批評家の柄谷行人という人が書いたものです。彼によるとニーチェは最も合理的とされる数学さえも客観的でないことを見破っていたのだというわけです。

柄谷さんはよく言葉や数の自己言及性ということに触れます。「数というのはある対象の尺度を測るものではない。」数は数についての数なのです。

たとえば、

x²=2 の解はx=√2 というわけですがこれはでっちあげです

xを説くためにはxを知らないといけないというパラドクスを隠ぺいするものらしいです。x=2/X なのですからね。

こう考えてみますと世の中に合理的な根拠というものは全くありえません。「基礎の不在」の中で永遠の真理など目指すことはできないと当時の柄谷さんは考えておられました。

当時はまだ冷戦時代で弱小化しつつもソ連が存在していた時代でしたので、その批判をするのにこういったロジックを用いられていたのです。