”歴史はくり返される”

「歴史はくり返す」といいますと、1989年によくいわれた「世界史の終焉」に反します。ですがくり返される出来事というのは、市民革命(ブルジョワ革命)によって完成した構造、資本主義と国民国家の結合によって完成した構造上での出来事をいいます。どんなに目新しく見えようともその根底にあるのはこの構造に帰結するといってもいいのです。人間が何か革命的で新しいことを始めてみようとしても、安心あるいは参考になるものを求めて、過去の出来事・人物を援用するのはよくあることです。ですが、問題は、拒絶・忘却していたものでさえも意図せずに引き出してしまうこともあります。フランス革命で完成された構造というのはそれほど強固というわけです。

今日とりだした英文は長文ですのでふたつのパラグラフに分けて読んでみます。一つ目が人間が意識して行う革命で、もう一つが忘却・拒絶していたものを再び登場させてしまう革命です。まず前者に相当する内容から。

原文
①There are two meanings to repetition in history.  ②The first is when people evoke events or people of the past when doing something new. ③ It is this form of repetition that Marx notes in the opening passages of The Eighteen Brumaire of Louis Bonaparte.④ There is a certain inevitability to the fact that, when faced with circumstances completely unknown, people try to understand them through their knowledge of what is familiar but in fact end up doing something entirely different.

 

私の訳
①歴史の反復には二つの意味がある。②ひとつ目は人々が何か新しいことを行おうとするとき過去の出来事あるいは人物を援用する。③この形式こそがマルクスが『ルイ・ボナパルトのブリュメール18日』の序文で書いたことなのだ。④ある種の避けられない事実だが、まったく見たことのない状況に直面すると人は類似したものの知識を通してそれらを理解しようとし、結局はまったく異なったことをしてしまうのだ。

 

英文のポイントⅠ

1)英語の表現

何気なく出てくるThere is 構文、これは英文を読む上で極めて重要なのです。そして強調構文は、強調される語を意識にとどめておきましょう、たんに「~は・・・だ」と後ろから訳し上げないようにしたいものです。「・・・こそ~だ」の意識で!

There is 構文強調構文

大事です。

2)構文の把握

when節がこのパラグラフだけで3つも出てきますね。②のセンテンスの中にふたつあります。そして初めのwhen節だけが名詞節としてこのセンテンスの補語として機能していて後ろのwhen節はその名詞節に内包されている分詞構文(副詞要素)なのです。④のwhenせつもthat節内部で分詞構文として働きます。

こういうことは些細なことに見えますが、英文は文と文以上に節と節の関係が重要になってくるのです。

これについてはこちらを参照してください

それでは次に、人間が意図せずともしてしまうことは?

原文
⑤The second type repetition is when the past, despite being rejected and forgotten, is nevertheless repeated. ⑥This compulsion to repeat is what Freud referred to as the “ return of the repressed.” ⑦And this type of repetition can be seen as the essential characteristic of state and capital, which structure the modern world. ⑧It too is inevitable.

 

私の訳
⑤第二の反復形態が起こるのは拒絶され忘却されたにもかかわらず、その過去が繰り返されるときである。⑥この強勢反復はフロイトが”抑圧されたものの回帰”として言及したものだ。⑦そしてこの型の反復がみられるのは資本と国家という本質的な性質としてである。それが近代世界を構築したわけだ。⑧これもまた不可避なのだ。

 

英文のポイントⅡ

 3)節の主題

ここでは、パラグラフをふたつに分けましたが実際の原文では分けられてはいません。それらは①の「歴史はくり返されるというのにはふたつの意味がある」に収斂されるのだから当然です。節の頭にくるのは主題を表しますが、②~④と⑤~⑧は内容上分断されていることに注意したいですね。一般的にはコントラストを示したい場合、副詞要素が来ることが多いです。副詞要素が主題の位置に来る場合の詳細はこちらを参照にしてください。

 

 4)構文の把握

くどいですが、英文は節と節の関係が重要です。SVOだけからなる文も節なのです。

 

⑤⑥は名詞節の中に補語として名詞節(when節,what節)が内包されている。whatは先行詞を含む関係代名詞ともとれる

⑦は名詞節(ここでは主節)のうしろに関係代名詞節が具体的に展開していく。

 

原文についての意見

原文では一つのパラグラフにされているものをふたつに分けましたが、はじめのパラグラフは私たち中高年が何か新しい状況に遭遇したとき過去の経験則を頼りにすることも例にできます。マルクスは横に置いておいてすこし脱線するかもしれませんがもう少し世俗的に話しますと、近年の情報化社会はこれまでの経験はあまり参考になりませんね。たとえば、トップダウン式の指示はスピード・対応に遅れが生じます。近代的な組織は通用しなくなりつつありますね。また、会社というのが無駄が多いことも気づかされます。その最たるものが、社員かもしれません日本ですと一度採用した人はそう簡単に解雇できません。仕事しない人にも延々と給料を支払わないといけません。ところが今ではクラウドソーシングでそのつどに応じて仕事を依頼できます。若年層が忌み嫌うのは、組織の規律と社員の交流といったものではありませんか?

実はこの文章で筆者がより展開していきたいのはふたつめの反復パターンなのです。何か最先端のことをやって得意になっている若者にしても実際はある構造の中で動いているにすぎずそれに気づいていないのではないか。たとえばインターネットは国境を超えるといいますがそう簡単なものなのか?資本のグローバル化も国境を超えるといわれますが必ず揺り戻そうとする国家の力が働きますね。ベネディクト=アンダーソンという人はネーションと国家という全く異なる原則を持っていたふたつが結婚して国民国家というものができたといいます。そしてこの筆者はさらに資本が結合したことで資本=国家=ネーションという三位一体の構造を見出します。資本制生産に生きづまりが見えると、他の国家、ネーションがスターリン主義、ファシズムという形の顔を見せるのです。しかしそれは同じ構造上にあるものといっていいのです。ファシズムは形式・ルーティーンに対する人間性の回復から起こったという人もいます。だとすると今日の人工頭脳というのもそう楽観視できないかもしれません。

現在、資本に転化しない仮想通貨がメディアで頻繁に取り上げられますがそれはこの構造から脱出できるものなのでしょうか。今現在は投機目的の人がほとんどです。15,6年前地域通貨というものが流行りましたがもうほとんど耳にしません。ほとんど失敗に終わっています。法定通貨の役割を補完するものだけは一時的に認められていただけです。資本は国境を超えるといっても、アメリカが今やっているブロック経済は国家の強化なのです。また中国や日本の仮想通貨規制も然りで通貨発行権の独占なのです。真新しいことを始めるには今置かれている状況・構造の認識することから始めないといけませんね。